10年程前は、床板と言えばいわゆる合板のフローリングを使う事が多かったように思いますが、現在では木の家でなくても無垢の床板を使う方が多くなってきましたね。無垢材の関心が高くなって来た事はうれしい事ですが、無垢の床なら樹種は何でもいいとはいきません! 床板は、壁材や天井材と違い、直接人の体が触れる部分ですし、毎日の生活により過酷に使用される場所でもあります。また、家具やピアノなどの重量物を長期に渡り支えなくてはいけないし、1階の床板は床下に近い事から、湿気などによるカビやシロアリなども気になりますよね! これらを考えただけでも、肌触りや耐久性など、多方面からの検討が必要になってくる事がわかります。
そして、床板を選択すると言う事は、日々の暮らし方とも密接に関係してくると言う事を忘れてはいけません。床でゴロゴロと過ごしたい方には、やわらかく肌触りのやさしい床板をお勧めします。また、ソファーや椅子を中心とした生活の方には、椅子の足などでもキズが付きにくい、少し硬質な床板が良いと思います。そして、子育てに合った床板や、趣味の用途に合った床板など、様々な視点で床板選びをしていただきたいと思います。
一度家を建てれば、多くの方がその家で一生を過ごしていくと考えると、一時の心地よさや見た目の良さだけでなく、将来の暮らし方をも視野に入れて床板選びを行うことも大切だと思います。たくさんの樹種の床板に触れる機会は少ないと思いますが、お友達の家や見学会などに出かけた時は、是非、床板を意識してみてください。きっと自分達に合った床板が見つかると思いますよ。今回のページでは、『実りの家』の広間で使用した栗の床板の特徴を始め、ココラボで建築していただいたお宅の、自慢の床板をご紹介いたします。
■ 栗(クリ)…「実りの家」
【分類】 広葉樹 ブナ科
【産地】 福島県、岩手県
【気乾比重】 0.55
【特徴】 重くて堅くて粘りがあり、はっきりとしていて美しい木目に独特のツヤがある。心材は淡い褐色、辺材は淡白色。
【床板】 広葉樹でありながら手触りが柔らかで硬質感がなく、時間が経つと段々色が濃くなってきて一段と輝きが出てくる。栗の木にはタンニンが多く含まれるので、水に強く非常に腐れにくいという特性がある一方、水じみ(アク)が出やすいので、水周りに使用する際には注意が必要。
『実りの家』の広間・キッチン・玄関に、栗の床板を使用しました。栗特有のはっきりとした木目がとても綺麗で、硬質でありながらサラリとした木肌がとても心地よい床材です。栗の床板で仕上げた広間は、どっしりとして落ち着いた雰囲気の空間になりました。
打合せ当初、広間に使用する床板の選択に悩んでいたKさん。色合いや木目、硬さなどを慎重に確かめながら、最終的に栗の床板に決めました。栗の床は硬く冷たいのでは? と思っていましたが、出来上がってみると意外と硬質感を感じず、床にゴロっと寝転んでも気持ち良さそうです。
栗材は、電車の枕木に使われた程の耐久性の高い木材です。また、我々日本人にとっては、食材として、また用材として重宝され、太古の昔から関りあって来た木材です。そんな木材で作られた床板という事で、特別の思いも感じさせる家になったように思います。数年たって、この栗の床板がどのように味わいを増すか…今からとても楽しみです。
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※気乾比重とは…
含水率15%の時の単位面積あたりの重さ。比重の重いものほど、強度・収縮率・熱伝導率が大きい。比重の大きいものは冬に触った時に堅く冷たく感じるが、比重の小さいものは温かみを感じる。
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