暮らしを映し出す照明器具選び
冬の気配を感じ始めた頃、ふと気がつくと日の入りが早くなり、ひとつふたつと家の灯りをつけ始めます。薄暗い室内の静けさも好きですが、夕暮れ時にぼんやりとした灯りから浮かび上がる室内の雰囲気もとても落ち着き、ついつい時間を忘れて見入ってしまいます。日が沈むまでの時間は短く、あっという間の楽しみですが、デッキに出て灯りのついた室内を外から眺めるのもなかなかいいムード。木の家は、壁や天井に貼られた木の凹凸や色や梁や柱の立体的な存在が空間に陰影を生み、なんとも言えない雰囲気をつくり出しているのだと思います。太陽の光では感じない素材の微妙なテクスチャーや、暖かな光に照らされた色艶など、灯りをつけた時にあらわれる独特な世界は、単に明るい場所をつくっているだけでなく、そこに暮らす一人一人に安らぎや癒しの空間を与えてくれる存在として、大切な役割を持っていると感じています。ですが、一口で“灯り”と言っても様々なタイプや手法があり、灯りを上手にコントロールしていくことが大切です。室内全体を照らすベース照明やスタンド、スポットライトのような局所的な灯り、また灯りを壁や天井に反射させてつくる間接照明など、目的や用途に合わせて使い分けていくことも大切で、照度や光の色は人によって感じ方が様々なため、年齢などによっても慎重に選択していくことが必要だと思います。
ココラボの家づくりの中でも、配線計画や照明器具選びなどの打合せをじっくりと行っています。木の家の室内は、単に四角い空間となることが少なく、屋根の勾配を利用した斜め天井や一階と二階をつなげたボリュームのある吹抜け空間、また、構造材などをあらわした柱や梁の存在などがあり、天井の中心にひとつ照明器具をつければ良いと言うことにはなりません。家族の動きや空間のたまりを見極めて適材適所に灯りを配置し、用途によって入り切りができる回路なども考えていく必要があります。そして、照明器具自体のデザインや灯りの質も様々あり、綺麗なフォルムや陰影などを楽しむ照明器具も提案しています。
今回のココラボのススメは、暮らしを映し出す照明器具をテーマに、用途や種類などを木の家の空間と合わせてご紹介したいと思います。照明器具の配置やデザイン、灯りの雰囲気などを是非ご覧ください。
「ひとつの家」
ソファーテーブルを照らすペンダント照明と、壁に取りつけられたモーガルブラケット照明が木組みの空間を照らし、梁や柱、壁の凹凸が電球の灯りに照らされ、落ち着いた陰影を生み、ゆったりとした時の流れを感じる空間。
「雫の家」
夕暮れ時、外から住まいを眺めると、家の中が暖かな灯りで満ちている。大きなガラス窓から漏れる灯り、玄関を照らす灯り、どちらも家族を待っているかのようで心が落ち着く。木の家は暖かな灯りが良く似合う。
室内全体を照らすベース照明
広間やダイニング、子供室など、活動的な空間には、ある一定の照度を確保したベース照明が必要です。薄暗い広間やダイニングも雰囲気があって良いですが、家族みんなが使う場所は用途も様々となり、まずは部屋全体を照らすベース照明を配置することをおすすめしています。ココラボでは、ベースとなる照明器具として、ダウンライト照明とモーガルブラケット照明を提案しています。ダインライトはLED60W相当品を基本とし、1坪に1個を目安に配置しています。部屋の中央に寄せたり四隅に離したりと配置は様々ですが、テーブルやソファーの位置を検討しつつ、天井面に現れた梁とのバランスを考えて配置しています。LEDのダウンライトは年々価格が安くなり、4つ配置してもシーリングライト一灯より格段と安く購入できるようになりました。またLED照明は発熱や消費電力が少なく長寿命のため、点灯時間の長いベース照明に向いています。
勾配天井や吹抜け空間など、平らな天井面がない場合にはモーガルブラケット照明を使用します。聞き慣れない名称だと思いますが、モーガルとは電球を取り付ける陶器の部分を言い、この部分だけを取り出した器具が販売されています。最もシンプルな照明器具ですが、このモーガルにLED60W相当品電球を取り付けて使用しています。ダインライトと同じく床面積1坪に1個の配置を基本としていますが、壁面に取り付けるため、バランスには毎回苦労しています。ダウンライトに比べて電球が外に飛び出している分明るく感じ、またどの面も照らしてくれるので影をつくりにくい照明になります。
ベース照明は部屋全体を照らす主照明となるため、シンプルで主張しないものを選び、スペースによっていくつかの回路分けをする事をおすすめしています。リビングダイニングでは、ソファーとダイニングテーブルのコーナーの二つの回路に分け、利用している空間だけを照らしたり、両方のスイッチをつけて全体を明るくしたりと、その時の用途や気分で切り替えできる仕組みがあると、便利で省エネにもつながります。また、3路スイッチと呼ばれる二カ所で入り切りの出来る仕組みも重宝です。玄関からの入り口でつけ、二階に上がる階段の登り口で消すなど、動線に合わせたスイッチ計画をしておくと動きに無駄がなく、ストレスの少ない生活が出来ます。照明の配置もスイッチ計画も、空間を読み取って、適材適所に配置していく事を心がけています。
ダウンライト
「囲い庭のある家」
サワラ板の天井に配置したダウンライト。やや中央寄りに取り付け、リビングダイニングに一定間隔で配置している。ダインライト照明の取り付けの注意点として、板割りを考えた位置とする事が重要。板と板の目地に合わせたり、板の中心に合わせるなど、大工との打ち合わせが必要になってくる。
「器の家」
杉の天井に4つのダウンライトを配置した広間。やや隅寄りに配したバランスは安定した印象を与え、部屋を均一に照らす。今のダウンライトはLED照明が一般的になり、電球を取り替えるタイプと、器具と一体化したタイプがある。LEDは寿命が長く連続点灯時間が長いため、一体化したタイプを選ぶ事が多い。
モーガルブラケット照明
「歩の家」
モーガルブラケット照明は、柱と柱の間隔や天井までの寸法を考えて取り付けるため配置設計が難しい。部屋のインテリアとしても存在感があるため、バランスを考えて設計している。モーガルブラケット照明は床面積2帖(1坪)に1個の数で配置し、部屋が均一に照らされるように配置している。
「時の家」
ココラボの家の照明器具として特徴的なのがモーガルブラケット照明。陶器製のソケットのみが器具となり、LED電球を取り付けただけのシンプルな照明器具。勾配天井や吹抜けなど、天井が高い部屋では天井面に照明器具を取り付けると交換などのメンテナンスが難しいので壁面に取り付ける事が多い。
スタイルも灯りもデザインされた照明
ベース照明は言わば裏方の役割を果たし、ペンダント照明は空間の主役となる照明器具です。主にダイニングテーブルに用いる事が多いですが、ソファーのセンターテーブルやコーナースペース、キッチンの手元灯として利用する事もあります。ペンダント照明とは天井から吊るされた照明器具を意味し、時には吹抜けの高い天井からぶら下げる事もあります。空間のポイントとなる事はもちろん、ダイニングテーブルなどでは食事を華やかにしてくれる役割もあります。形状や灯りの広がり方など様々なタイプがありますが、ココラボの定番としてルイスポールセン社のPH5を使用する事が多くあります。螺旋状に重なったシェードから漏れる灯りが綺麗で、光源が直接目に入らないように工夫された形状です。機能とデザインが一体となったこのペンダント照明は、長い年月を経ても世界中で人気が高く、多くの人に愛されています。現在、我が家でもダイニング照明として使っていますが、実は数年間、ペンダント照明無しで食事をしていました。天井にあるシーリングファンとの関係や、とりあえずキッチンのスポットライトを利用すれば…と安易な気持ちで生活をスタートしたのが今から15年前。慣れというのは怖いもので、特に気にする事もなく過ごしていました。数年前、ルイスポールセン社のショールームで見たPH5に感動し、すぐに取り付けてみた所その効果にビックリ。テーブルの上がとても明るく見やすい。そしていつもの料理がいつも以上に美味しく見える。今まで無しで過ごしていた事が信じられないほど、当たり前のものになってしまいました。その後ペンダント照明にはまり、ソファー横や玄関収納の上に違ったタイプのペンダント照明を設置し、灯りと共に器具自体のデザインも楽しんでいます。
ペンダント照明
「ラフの家」
真鍮製のペンダントライトは、flame社のbrassシリーズ。オイル仕上げを施した真鍮製のシェードは、年月とともにくすんだ金色へと味わい深く変化していく。小ぶりなペンダントは多灯吊りがおすすめ。下向きの灯りは、テーブル面を明るく照らし、美しい陰影を生む。
「結の家」
ダイニングペンダントとして採用する事の多いルイスポールセン社のPH5クラシック。重なるシェードの隙間から漏れる光が美しくて柔らかい。また光源(電球)が見えないように計算されており、どこから見ても眩しく感じない工夫がされている。
「青天の家」
ソファーコーナーに吊るされた可愛い形のペンダントは、artek社A338。その見た目からビルベリー(野生の実)という愛称を持つ。
「結びの家」
アイアンワークでおなじみのアトリエプラトーさんのオリジナルペンダントライト。髪を丸めたようなシンプルな円錐形状が光を出す。
機能とインテリアで選ぶスタンド照明
色々な薪ストーブが出てきてもやっぱりこのカタチ。この重厚な存在感が好きと言う方も多いのではないでしょうか。アメリカの薪ストーブを代表するバーモントキャスティングス社とヨーロッパを代表するヨツール社のクラシックデザインストーブ。それぞれに考え方は違うようですが、デザインの中にあるレリーフにも深い意味があり、歴史や願いなどが刻まれていると聞いた事があります。本体は重厚な鋳物で作られ、ずっしりと重く存在感のある鋳物は蓄熱性に優れ長い時間輻射熱を放ちます。また、クラシックなデザインストーブですが、どちらもクリーンな排気をするために、それぞれの考え方に合せた燃焼方式を採用しています。バーモントキャスティングス社は触媒方式、ヨツール社はクリーンバーン方式と呼ばれる燃焼方式を主に採用しています。
この二つのメーカーの薪ストーブを同じ枠でご紹介するのはある意味違うかもしれませんが、このスタイルを見ると薪ストーブの歴史や大切な思いを感じます。炎のゆらめきや薪ストーブの暖かさがある事で、毎日の暮らしにこれほどまでの豊かさを与えてくれる。そんな豊かさを感じる薪ストーブだと思います。
スタンド照明
「ここらぼの家」
カウンターテーブルの上に一つあるだけで雰囲気をつくってしまうAJTable。重心が低く見た目以上に安定感のあるスタンドで、ライト部分が上下に可動し、デザインだけでなく機能性も高い優れた照明器具と言える。
「ここらぼの家」
ルイスポールセン社のAJFloorを3本並べてインテリアのアクセントに。左からブラック、サンド、ホワイトの落ち着いたカラーは、カタログを見て一目惚れ。定番のスタンドではあるがどんな空間にもシンプルにマッチする。
多機能なセンサー照明とデザイン照明
玄関ポーチや車庫などに取り付ける屋外照明は、センサー機能を持った機種が人気です。一口にセンサーと言ってもその動作は様々で、人で反応する人感センサーや暗くなると点灯する明暗センサー、明るさと人の両方で点灯する段調光センサーなどがあります。防犯用に取り付けたい場合は人感センサーを選択し、暗闇の中で人を検知すると突然ピカッと光ります。威嚇を兼ねてフラッシュするタイプは、住宅街を歩いていて驚いた経験のある方も多いと思います。明暗センサーは夕方暗くなると自動的に点灯するセンサーです。公園や道路など、街灯の照明として利用されていますが、住宅でも植え込みに設置するアプローチ灯や、表札などを照らす門灯などで使われています。毎日連続的に動作するのでとても便利なセンサーですが、暗い間ずっと点灯しているのはもったいないと思ってしまう事もあり、タイマーと併用して使う事もあります。人感センサーと明暗センサーの利点を生かした段調光センサータイプは、玄関ポーチなどに使われます。夕方暗くなると全体の20%の明るさで点灯し、人が近づくと100%に。そしていなくなるとまた20%に戻り、設定した時間になると消灯します。夜中に人が近づくと再度100%の点灯になる防犯性も兼ねたものもあります。とても便利で経済的、特に20%のほんのりした明るさが人気で、省エネながら来客を優しく出迎えてくれているようで心安らぐ灯りになります。屋外の照明器具で使用される電球も、ほとんどLEDのものとなり、消費電力が少なくなったため、玄関ポーチの照明器具はセンサー無しのデザイン性を重視した器具を選ぶ方も増えてきました。和風的な玄関イメージに合わせた白木調のものや、ステンドグラス風の華やかなタイプ、灯りの質を高めた北欧デザインなど様々な器具があり、我が家の顔となる玄関照明として個性的な器具を選んでみるのもいいですね。
屋外照明
「泉の家」
ぽっと玄関を照らしてくれるプラケットタイプの照明器具は、ルイスポールセン社のトルボー155ウォール。可愛らしい形状は長く愛されている定番の形。同じシリーズでペンダントやボラードタイプもあり、家の灯りをコーディネートして楽しむことも出来る。
「ここらぼの家」
センサー付き軒下ダウンライト。暗くなるとほんのりとした20%点灯で玄関を照らし、人が近づくと明るい100%点灯に変化。また、設定時間になると自動消灯し、夜間はフラッシュ機能をもった防犯ライトにもなる優れもの。人の暮らしに寄り添ってくれる照明器具。
プラスαの照明計画
家づくりの中で、近年急激に変化したものと言えばやはり照明器具ではないでしょうか。数年前までなら当たり前にあった蛍光灯や白熱灯が今では見かけることが少なくなり、蛍光灯にあってはメーカーのカタログからほとんど消えてしまいました。蛍光灯に変わって登場したのは誰もがご存知のLED照明で、コストもぐんぐん下がり、ダウンライトなどは蛍光灯の時の半額と言っても過言ではありません。コストだけでなく、消費電力や耐久年数、発熱量の面から見てもLEDライトに軍配が上がり、もはや蛍光灯を選択する必要がなくなってしまいました。LEDライトは光の色をつくることも得意で、ひとつの器具で数種類の色を出すことも出来るようになり、従来の昼白色、電球色に加えて、中間色の温白色も選択出来るようになりました。また、ダウンライトに関してはLEDの耐久年数が長いため、電球の取り替えが無くなり、器具と電球が一体となったものが普及商品として推奨されています。短期間で照明器具の主役に登りつめたLED照明ですが、従来の電球の灯りから比べると陰影や暖かみなどと言った情緒を感じる事が少なく、どこか物足りない気持ちにもなります。住まいの灯りはただ明るければ良いと言うものではなく、心を落ち着かせたい時、またひとつのテーブルに集まって仲間や家族と食事やおしゃべりを楽しみたい時など、明るさだけでなく、その場の演出や心地よい陰影などが求められると思います。シェードや器具から生まれる影、間接的に照らされた壁や天井、また、時には一点だけを照らすスポットライトなど、灯りは様々なシチュエーションで求められる質が変わり単一なものではないと思います。また、照明器具は灯りが主役と考えシンプルな形状を求める方も多いと思いますが、器具自体のデザインも空間を引き締め、部屋の重心をつくる事もあります。照明器具や家具などのインテリアは機能面が大切なのはもちろんですが、絵画や装飾品などにも値する優れたデザインも多く存在しています。ダイニングペンダントや書斎のスタンドなど、ちょっとだけ贅沢な照明器具を選んでプラスαな暮らしを楽しむのもいいですね。お気に入りの照明器具を見つけて、いつもと違った夜を楽しんでみてはいかがですか。
水回り照明
「洗面室」
トイレや洗面化粧室などに設置することの多い、人感センサータイプのダウンライト。人が近づくと点灯し、一定時間後消灯する。消し忘れがなく経済的な利点のほか、二方向から出入りする部屋や、スイッチがつけにくい場所にも重宝する。
「浴室」
浴室に取り付ける照明器具は、屋外でも設置出来る、防雨・防湿型の器具を選択する。ガラスや樹脂のカバーで電球が保護され、水や湿気が内部に入らない構造となっている。ブラケットやシーリングのほか、ダインライトタイプも選択出来る。
暮らしを彩るデザイン照明
Louis poulsen
(ルイスポールセン)
ポール・ヘニングセン、アーネ・ヤコブセンといった、才気あふれるデザイナーとの密接なパートナーシップによって生み出されるシンプルで美しい照明器具メーカー。長い歴史に支えられ、今でも世界中で愛されている。
flame
(フレイム)
素材を生かしたシェードや個性的なデザインで人気の高い、兵庫県芦屋市に本社を置く照明器具メーカー。何気ない日常の暮らしをよりよくするきっかけになれば、心を動かすような灯りを届けたいという思いで暮らしを彩る照明器具を製作している。
yamagiwa
(ヤマギワ)
優れたデザインの照明器具を扱うメーカー。様々なジャンルやデザインを取り揃え、豊富なラインナップが特徴の老舗。定番ものをはじめ、新しい挑戦や発想で生み出される器具は、私たちの日常を非日常に変えてくれる。