こころ木造建築研究所

機能とデザインを合わせ持つ窓際のスクリーン

 秋から冬へと季節が変わり、寒さと共に日差しの強さも変わってきました。夏は室内に入らなかった日差しも日に日に伸び、気がつけば部屋の中心付近まできています。夏は嫌われていた日差しも冬には暖かくてありがたいのですが、カーテンを全部開けて日差しをそのまま取り入れたり、ゆっくりと外の景色を眺めたいと思っていても、カーテンを開けると視線が気になって、空気の入れ替えの時も、窓は開けてもレースだけは閉めたまま、なかなか開けられないと思っている人も多いと思います。窓は単に明るさや風通しなどの役割だけではなく、庭の木々や草花の景色を取り入れたり、青空や月を眺めたりと豊かな時間を与えてくれます。また、利点だけでなく、窓から暑さや寒さを感じたり、結露によってカーテンがカビたりすることもあります。気密や断熱性の高い住宅ではガラスやサッシ枠の性能が重要となり、窓を小さく設計したり、遮熱ガラスや樹脂サッシといった性能の高い製品を使うことが求められ、更に窓の重要性が高くなってきました。このように一口に窓といっても様々な要素を持っているため、窓の配置や大きさと合わせて窓に取り付けるスクリーンの役割も大きく、設計段階で性能や使い勝手を考えて選んでおく必要があります。ココラボでもプランの段階で窓際のスクリーンを提案することが多く、大きな窓には冷気を止めるスクリーンを、外からの視線が気になる場所には目隠しを兼ねたスクリーンを選定しています。各メーカーから様々なスクリーンが出ていると思いますが、意外と機能とデザインを兼ね備えたものは少なく、カタログの説明だけでは使い勝手や耐久性などはわかりにくいと思います。また、カーテンなどのスクリーンは、家の完成後に決めれば大丈夫と思っている人も多いと思いますが、取り付け場所や開け閉めの動作に合わせた検討をしておかないと、後で問題になるケースも少なくありません。今回のココラボのススメでは、機能とデザインを合わせ持つ窓際のスクリーンの紹介と共に、それぞれの特徴や適した設置場所などを合わせて紹介していきたいと思います。今回オススメするスクリーンの多くは、『ここらぼの家』でも実際に使用してその良さを実感しています。冬は窓際のスクリーンが活躍する季節。ご興味のある方は是非体験していただき、家づくりのヒントにしていただければと思います。

「旬の家」

掃き出し窓からの日射とプライバシーを考えてウッドブラインドを設置。シックなダークブラウン色を使って、重厚かつリゾート感を演出。日差しや隣地からの視線を上手にコントロールしている。

「ここらぼの家」

上下の大きなガラス窓に取り付けたハニカムサーモスクリーン。透けた光がとても綺麗で、冷気を抑える効果もある。上下の開閉は、コードを使って手動。障子のような柔らかい光とシンプルな構造がとても気に入っています。


大きな窓には、冷気を止めるスクリーンが必須

 現在の新築住宅なら、もはや当たり前と言っても過言ではない「ペアガラスのアルミサッシ」ですが、ガラスの種類や空気層の厚みなどによって、性能も様々だということをご存知ですか? ペアガラスにすれば、結露も起こらず寒くないと思ったら大間違い。案外アルミサッシの部分が結露したり、窓際にいると冷気も感じます。ガラスやサッシ枠の性能を上げることで問題を解決することもできますが、ココラボでは、障子を取り付けたり、空気層を持つ「ハニカムサーモスクリーン」を提案しています。どちらも窓からの冷気を抑え、窓際にいても不快感を感じません。特に二重の空気層を持つ「ダブル・ハニカム構造」のスクリーンは性能が良く、窓の大きさに合わせてピタッと設置すれば室内の暖房効率も上がり、省エネにも一役かってくれます。ダブル・ハニカム構造のスクリーンは、シングルタイプに比べて性能も高く、また折りが細かいので見た目にも綺麗な形状をしています。使われている素材も障子のような透け感で柔らかく、部屋の雰囲気をグッと上げてくれます。開閉動作にやや時間がかかる点と、窓を開けているときは使用できないという欠点がありますが、広間などの大きな窓に使い、日差しや視線に合わせて上下しながら使うと効果的だと思います。ブラインドやロールスクリーンに代表される上下に動くスクリーンは、巻き上げ部分がそのまま見えたり、重なる長さが大きく観賞用の窓の場合はスッキリしない事もありますが、ハニカムサーモスクリーンの場合は折りたたみ長さが小さく、窓を遮る事が少ないのも特徴です。カーテンボックスを設けてより綺麗に見せる方法などもあるので、設置する場所に合わせて検討していくのも楽しいと思います。カーテンなどに比べて、目にする事が少ないスクリーンなので、ピンと来ない方も多いと思いますが、『ここらぼの家』の大きな窓に採用しているので、実際に開閉してみたり、窓際の冷気などを感じて行かれる方も多いスクリーンです。ハニカム構造のスクリーンは、各社から色々な色やバリエーションが出ていますが、やはり特別な色や機能ではなく、性能とデザイン性を兼ね備えたシンプルな物が良いと思います。色や柄、生地が選べるカーテンに比べて単調ではありますが、スクリーンも壁や床といった建築の一部と考え、定番として長く使うことのできるものが良いと思います。

ハニカムサーモスクリーン

「ここらぼの家」

二重の空気層を持つハニカムサーモスクリーンは、空気の熱伝達抵抗を利用して高い性能を発揮している。メーカーによってシングル構造のタイプもあるが、ココラボではセイキ総業のダブルハニカムを使用している。

「ここらぼの家」

大きなガラス窓に設置したハニカムサーモスクリーン。大きさに制限があり、幅2.7mの窓は二枚に分かれて設置となる。分割の利点もあり、日差しの強さに合わせて開ける場所を選択している。中庭の植栽の影が写って楽しい。

視線を遮りながら通風を得るスクリーン

 多くの方がレースカーテンを選択するのは、やはり風を通しながら視線を遮る事ができるからだと思います。風になびかれてヒラヒラとしている姿は見た目にも涼しそうで、窓際でうたた寝…などをイメージしてしまいます。ですが、レースカーテンは案外風が通らず、また網戸の汚れが付着しやすくて汚れやすいのも事実です。レースカーテンは洗う事も出来ますが、大きなサイズのカーテンを洗うのは大変で、頻繁に外して洗うのはなかなか難しいと思います。カーテンは、一般的に横にスライドさせて開閉し、窓の横に束ねていると思います。その姿をインテリアとして楽しむ方も多いと思いますが、無造作な姿だとダボついてスッキリせず、束ねたままにしておくと風が通らずカビを繁殖させてしまう事もあります。レースカーテンの他に視線を遮りながら風を通すスクリーンとして思いつくのがブラインド。ブラインドと聞くと事務所などで使われているスチール製を思い浮かべ、折れ曲がったり、掃除が大変そうなイメージを持つ方も多いと思います。ですがブラインドの機能はとても優れていて、羽の開閉は簡単で好きな角度や位置にすることが出来ます。視線や光の向きに合わせて調整出来、窓格子と同じく室内から見えても外から見えにくいといった特性を持っています。

 では、どんなブラインドなら良いか? 掃除がしやすくて壊れにくい。そして金属の無機質な質感ではなく室内に馴染むもの。そんな都合の良いブラインドは…実はあるのです。ココラボでオススメしているブラインドは羽が木製で通常のブラインドより広くつくられています。羽が広いので間隔も大きく、風が通りやすく、掃除もしやすい構造になっています。木で出来ているので光も優しく反射し、木の家に合った雰囲気を出してくれます。羽の種類や大きさも様々あり、腰窓などの小さな窓には35㎜タイプ、掃き出しの大きなタイプには50㎜を使っています。ウッドブラインドは、上に束ねた時の重なりが大きくなってしまうのがイマイチですが、工夫次第では窓上にカーテンボックスをつけてスッキリと見せる方法もあります。メーカーでけでなく、木材屋さんが開発した、木そのものを使ったブラインドや、竹を利用したもの、集成材を使ったエコな商品もあります。使う場所や部屋のイメージで楽しみながら選択するのもいいいですね。各色ありますが、私はあえて白やベージュ系が好み。耐水タイプもあるので『ここらぼの家』では浴室にも使いました。

ウッドブラインド

「旬の家」

ウッドブラインドには2種類の羽の大きさがあり、掃き出し窓の大きな窓には50㎜を使い、腰窓などの小さな窓には35㎜を使っている。大きさによって見え方や透け方が違い、また上に束ねた時の重なり長さが違う。大きい羽の方が小さくまとまる。

「ツナガリの家」

玄関の大きなガラス窓に取り付けたウッドブラインド。窓の外にはジューンベリーを植えて目隠しとしているが、落葉の後はブラインドが活躍している。木に包まれた空間の中にある窓はより景色が強調され、ブラインドを透過する緑がとても心地よい。

ここらぼの家

浴室(耐水ウッドブラインド)

浴室の窓に取り付けた耐水タイプのウッドブランド。浴室の窓を透明ガラスにするケースは少ないが、坪庭などをつくって日中浴室から外を眺めるのもなかなか良い。FIXとすべり出し窓を連窓した縦長の窓がお気に入りで、FIX部分にウッドブラインドを取り付けている。

朝日の家

カーテンボックス
の工夫

垂れ壁の中にウッドブラインドのカーテンボックスをつくって収納できる仕組みを考えた。庭に向かった大きな窓を邪魔する事なく景色が楽しめるスッキリとした窓際をつくる事が出来る。

シンプルなスクリーンと、ちょっと贅沢なロールスダレ

 もっともシンプルなスクリーンと言ったら、やはりロールスクリーンをイメージすると思います。一枚の布でつくられ、上げたり下げたりと動作も簡単。途中で止めて日差しを遮ったり、視線を隠したりと機能面でも優れています。スクリーンの種類で色や柄を楽しんだり、遮光や耐水タイプもあるので場所に合わせたチョイスができます。通風の際には下げておく事ができず、また一枚の布なので断熱性は低いですが、小さな窓や視線だけ遮りたい窓に使う事が多く、部屋の仕切りなどに使う事もあります。巻き上げ部分の構造上両サイドに隙間が出来てしまうのがちょっとした欠点ではありますが、ブラインドやサーモスクリーンに比べて安価で購入でき、洗えるタイプが多くあるのが利点だと言えます。ちょっと違った使い方としてプロジェクターのスクリーンとして使う事もできます。専用タイプを単体として使う事も出来ますが、少し厚手の生地を選んで窓のスクリーンと兼ねて使っても良いと思います。

 ロールスクリーンの中で、ちょっと変わったスダレタイプがあるのをご存知ですか? 経木スダレとも呼び、ちょっと高級なスダレとして私も憧れていた事があります。夏に西日除けで吊るしているスダレのロールバージョンですが、葦ではなく、木や竹ひごなどでつくられているものを良く見かけます。縁側や和室の窓に取り付けると雰囲気が上がり、夏の日差し除けにも役立ちます。灯りをつけて室内が明るくなると外から見えやすくなるので、室内に使う時は、もう一枚ロールスクリーンを取り付け、目隠しすることもありますが、基本的には廊下や縁側などで使うのが良いと思います。値段も高いので単に機能面と言うより装飾的な要素が大きいスクリーンですが、ちょっとしたゆとりの場所につけることが出来れば部屋もぐっと落ち着き、夕方の灯りが漏れた外観は、どこか懐かしさのある雰囲気をつくってくれます。

ロールスクリーン、ロールスダレ

「囲い庭のある家」

縁側の窓に取り付けたロールスダレ。透け感が良く、日中、外から室内は見えないが、中から見ると意外と外が良く見える。竹ひごや木で出来たものが多く耐久性も高くなっている。

「ツキの家」

中庭の板塀とロールスクリーンを使って視線を隠している。隣家の2階からの目隠しに効果的。幅2.7mの一枚のタイプもあり継ぎ目のないシンプルな表情をつくることが出来る。

 色々な窓際のスクリーンを紹介してきましたが、もっともポピュラーなスクリーンとして障子を忘れてはいけません。杉や桧の細い桟に紙一枚を貼った日本古来のスクリーンですが、光を通しつつも断熱性が高く、極めて機能性が高いスクリーンだと言えます。透過する光は他にはない心地よさを与えてくれ、単純な桟であっても美しいデザインとなります。和室だけでなく、吹き抜けのハイサイド窓に取り付けて西日除けにしたり、紙を二枚貼った太鼓障子をつくって、より断熱性の高い内障子を取り付けています。障子は引き違いで使われる事が多く、やや閉鎖的なイメージもありますが、戸袋を設けて引き込み式にすれば開放的な窓際をつくる事もできます。障子は紙の黄ばみ破れなどが気になりますが、丈夫な紙(タフトップ)もあるので、是非、積極的に取り入れていきたいと思っています。

 ココラボで使用することが多いスクリーンを中心にご紹介してきましたが、その他様々な種類やタイプもあり、単にデザインや好みだけでなく窓に適した機能や性能を合わせ持つスクリーンを選択していただきたいと思います。住まいにとって、窓はとても大切な要素です。時には欠点にもなりますが、暖かさや涼しさを与えてくれ、空や草木などの心安らぐ景色を見せてくれます。窓の機能面だけを考えるのではなく、四季を通じて心地よい暮らしをつくるためにも、快適で美しい窓際をつくっていきたいと思います。

障子

「礎の家」

縁側の窓に取り付けたロールスダレ。透け感が良く、日中、外から室内は見えないが、中から見ると意外と外が良く見える。竹ひごや木で出来たものが多く耐久性も高くなっている。

ココラボ定番のスクリーン

ハニカムサーモスクリーン

セイキ総業株式会社
採光・ループコードタイプ

ダブル・ハニカム構造のスクリーンは、断熱性能だけでなく折が細かい事で繊細で綺麗。『ここらぼの家』の大きな吹抜け窓に採用しています。


ウッドブラインド

株式会社ニチベイ
クレール50・35
(ラダーコード)ループコード式

羽の開閉をするコード部分をそのまま現したラダーコードと、コードを隠したラダーテープ仕様があります。部屋の雰囲気で選べますが、ココラボではスッキリタイプのラダーコード仕様を採用しています。


ロールスクリーン

株式会社ニチベイ
ソフィー チェーン式

色、素材等様々なタイプがありますが、主張しないホワイトのロールスクリーンを採用しています。遮光タイプもあり寝室などにも使います。

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